特定技能の定着支援とは|義務的支援10項目と製造業の離職防止策
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特定技能の定着支援とは、2019年4月に施行された特定技能制度で、特定技能1号の外国人を雇用する企業に法令で義務付けられた仕事上・生活上のサポート(義務的支援)のことです。内容は支援計画書にまとめて出入国在留管理庁へ提出し、実施状況は定期届出や指導の対象になります。
製造業の現場では、義務的支援を実施したうえで、作業の伝わりにくさや孤立感など製造現場ならではの課題への対策も併せて検討する必要があります。特定技能1号の通算在留期間は原則5年以内で、この限られた期間内の離職・転職の繰り返しは本人にとっても負担になります。

執筆者
特定技能外国人紹介・支援担当
武藤 拓矢(むとう たくや)
- 申請等取次者
- 外国人雇用管理主任者
合同会社エドミール代表。特定技能に特化した登録支援機関として、人材紹介から入社後の定着伴走まで支援。コミュニケーション量を重視し、長期定着につながる伴走を大切にしています。
目次
特定技能の定着支援とは|義務的支援の法的位置づけ
特定技能の定着支援とは、特定技能1号の外国人を受け入れる企業に法律で課された、就労と生活の両面を支える支援のことです。法令上は「1号特定技能外国人支援」と呼ばれ、職業生活上・日常生活上・社会生活上の支援が義務付けられています。
受入れ企業(特定技能所属機関)は、支援内容を「支援計画書」にまとめて提出する義務があり、計画どおりに実施できているかは行政の確認対象になります。特定技能の在留資格そのものの区分や要件は、工業製品製造業の特定技能の区分・要件で詳しく解説しています。
義務的支援10項目の内容と定期面談の運用ポイント
義務的支援は、事前ガイダンスから定期面談まで10項目で構成され、内容は支援計画書に記載して提出する必要があります。項目ごとの実施記録も、後日の確認に備えて残しておく必要があります。
義務的支援10項目の一覧
10項目は、入国前の説明から入国後の生活支援、離職時の対応まで時系列に並んでいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ①事前ガイダンス | 雇用条件・活動内容の説明 |
| ②出入国時の送迎 | 入国時は空港・港での出迎えと事業所または住居までの送迎、出国時は空港・港までの送迎と原則保安検査場までの同行 |
| ③生活確保の支援 | 住居確保・銀行口座や携帯電話契約の補助 |
| ④生活オリエンテーション | 本人が十分理解できる言語で原則8時間以上、生活ルールの説明。継続雇用等で生活環境に変化がない場合も、必要な情報を説明したうえで4時間以上実施 |
| ⑤公的手続きの補助 | 住民登録など必要な行政手続きの案内・書類作成補助と、必要に応じた同行 |
| ⑥日本語学習機会の提供 | 教材紹介や講座の案内 |
| ⑦相談・苦情への対応 | 職場・生活の相談窓口の設置 |
| ⑧日本人との交流促進 | 地域行事や社内交流の機会づくり |
| ⑨転職支援 | 本人の責めに帰すべき事由によらず雇用契約が解除される場合に、次の受入先探しなどを補助 |
| ⑩定期的な面談・通報 | 3か月に1回以上の面談、労働基準法違反等の通報 |
申請書類・提出のタイミングは特定技能の申請書類一覧で企業側チェックリストとして整理しています。
定期面談を形だけで終わらせないための運用ポイント
定期面談は、単なる義務の消化ではなく離職の予兆を早期に拾う仕組みとして運用する方法があります。3か月に1回という最低頻度を守るだけでは、変化に気づきにくい場合があります。
- 入社直後の3か月間は面談の間隔を短くする
- 業務内容・人間関係・生活面の不安を個別に確認する
- 担当者の主観に頼らず、同じ質問項目で毎回記録する
- 母語対応が必要な場合は通訳を用意するか、やさしい日本語で質問する
特定技能人材はなぜ離職するのか
特定技能人材の離職や就労継続上の課題としては、業務内容と採用条件のずれ、職場でのコミュニケーション、生活・言語面の不安、相談体制を個別に確認する必要があります。これらを放置すると、個別の企業では離職が続くことがあります。
- 業務内容のずれ:採用時に説明した内容と実際の作業に差があると、早い段階で不信感につながる
- 職場でのコミュニケーション:日本語での指示が伝わりにくいと、注意や指導が「叱られている」と受け取られ孤立感を強めることがある
- 生活・言語面の不安:住居契約や公共料金の支払いなど日本特有の手続きへの戸惑いが就労意欲に影響することがある
- 相談体制:相談窓口や面談の機会が乏しいと、小さな不満が蓄積しやすい
製造業の現場で定着率を左右する要因と対策
製造現場では、単純作業の反復や工程の細分化によって、仕事の目的や生産全体の流れを実感しにくくなることがあります。作業の教え方や役割の伝え方を工夫することで、その実感しにくさへの対応を検討できます。
製造現場特有の離職要因
製造現場では、同じ動作の繰り返しや工程の細分化によって、仕事の目的や全体像が伝わりにくくなることがあります。全体像が見えないまま反復作業だけを続けると、達成感を得にくくなる場合があります。
現場でできる対策
現場でできる対策の一つは、工程ローテーションや多能工化によって、担当以外の工程も経験できるようにすることです。
- 担当以外の工程を定期的に経験させ、生産全体の流れを把握してもらう
- 完成品がどのように使われるかを共有し、担当工程の位置づけを伝える
- 不良率や生産性などの指標を共有し、改善の手応えを実感できるようにする
定着率を高めるために企業ができる具体策
定着率を高める具体策として、採用段階でのミスマッチ防止、定期面談とメンター制度によるコミュニケーション支援、キャリアパス・評価制度の明確化の3点が考えられます。義務的支援の実施に加えて検討する余地がある取り組みです。
採用時のミスマッチを防ぐ
採用時のミスマッチを防ぐ方法の一つが、求人段階で業務内容・体力要件・作業環境を具体的に提示し、可能であれば採用前に現場見学や体験の機会を設けることです。実際の作業を見たうえで応募してもらえば、入社後のギャップを小さくできます。
コミュニケーション支援とメンター制度
コミュニケーション支援の一つが、先輩社員が生活・仕事の相談役となるメンター制度です。同じ職場に相談できる相手がいれば、孤立感を抑え、小さな不満を早い段階で共有しやすくなります。
定期面談とメンター制度を組み合わせると、面談だけでは拾いきれない日常の変化も把握しやすくなります。
キャリアパス・評価制度の明確化
キャリアパス・評価制度の明確化とは、特定技能2号への移行条件や昇給の基準を数値や条件で示す方法です。評価基準や移行条件を入社時点で具体的に説明すると、本人が将来の働き方を検討しやすくなります。
登録支援機関へ委託するか、自社支援か
自社支援を行うには、受入れ・管理実績または生活相談業務経験の基準に加え、支援責任者・支援担当者の選任や相談体制など複数の基準を満たす必要があります。支援計画の全部を登録支援機関へ委託すれば、受入れ機関はこれらの基準を満たしたものとみなされます。
登録支援機関に委託するメリット
登録支援機関に委託すると、10項目の実務対応や書類作成のノウハウを持つ担当者に任せられるため、初めて外国人を受け入れる企業でも運用の抜け漏れを防ぎやすくなります。委託費用の内訳や相場は特定技能の受け入れ費用相場で確認できます。
製造業に対応実績のある登録支援機関の比較は製造業に強いおすすめ登録支援機関にまとめています。
自社支援に求められる要件
自社支援には、過去2年間に、就労可能な対象在留資格を持つ中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った実績があり、役員・職員から支援責任者と各事業所1名以上の支援担当者を選任する方法のほか、過去2年間に当該中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を持つ役員・職員から、支援責任者と各事業所1名以上の支援担当者を選任する方法など、複数の基準があります。
いずれの基準も満たせない場合は登録支援機関へ支援業務の全部を委託しますが、判断の前に自社の受入れ体制を確認しておく必要があります。受入れ全体の流れは製造業の特定技能受け入れ完全ガイドで確認できます。
紹介から定着伴走まで一貫依頼するという選択肢
候補者の紹介・在留資格申請・入社後の定着支援までを1社にまとめて依頼すると、担当者間の情報の引き継ぎ漏れを防ぎやすくなります。紹介時点で把握した候補者の希望や適性を、入社後の面談・配置検討にそのまま生かせる点が、別々に依頼する場合との違いです。
委託先を検討する際は、紹介実績だけでなく、入社後の定着支援まで対応できるかを確認しておくと安心です。
よくある質問
- 定着支援は自社で全部やらなければいけませんか?
- いいえ、義務的支援の全項目を法務大臣登録の登録支援機関へ委託できます。自社支援に必要な複数の基準を満たせない企業は、委託が必須になります。
- 定期面談は誰が対応すればよいですか?
- 支援責任者または支援担当者が対応します。母語での会話が難しい場合は、通訳の同席ややさしい日本語での質問を用意すると、本音を引き出しやすくなります。
- 製造業ならではの定着対策で優先すべきことは何ですか?
- 工程ローテーションや多能工化によって、担当以外の工程も経験できるようにすることです。仕事の目的や全体像を伝える方法の一つです。
まとめ
定着支援は義務的支援の実施だけでなく、製造現場ならではの課題を踏まえた対策まで含めて設計を検討する取り組みです。義務的支援10項目を漏れなく実施したうえで、採用時のミスマッチ防止・メンター制度によるコミュニケーション支援・キャリアパスの明確化を組み合わせることが選択肢になります。
自社での実施が難しい場合は登録支援機関への委託を、紹介から定着伴走まで一貫して任せたい場合はワンストップ対応の窓口を検討すると、体制構築の負担を抑えられます。
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